【10代男性、投球時の肩痛(野球)】が改善した症例
来院動機
野球の練習でキャッチボールを行っていた際に肩に強い痛みと自力での肩を挙げることができなくなった。痛みが強く、また土曜日の夕方ということで整形外科が休みで、痛みを緩和してほしいとのことで来院。
所見
・肩関節の自動運動ができず、力が入らない。他動で挙上させるも90°に満たない。
・後方の筋肉と上腕の筋肉の硬さが強く筋バランスの左右差がかなりある。(小円筋、肩甲下筋、上腕二・三頭筋など)
・整形外科的テストや筋力テストは可動域の制限、疼痛増大に伴い行えない。
・超音波エコーで観察したところ、腱板の損傷や断裂などの所見は見られなかったが上腕骨の骨端線の離開と上腕二頭筋の腱に炎症反応を確認した。
【施術】
1回目:上腕と肩関節後方の筋肉を徒手療法で対応し、鍼で腋窩神経の通るQLS領域に対し鍼通電を行った。また、上腕二頭筋長頭腱の炎症反応があった場所に対しマイクロカレントを行い炎症鎮静と組織修復を図った。また、炎症に対する対応と症状の説明を行い後日、整形外科への受診をお願いした。
2~4回目:MRI診断にて、関節の機械的炎症により水が溜まっているとの診断。前回に比べ、炎症も落ち着き安静時での痛みは緩解していたがやはり2週経過しても肩関節の自動運動ができなかったため神経障害も視野に入れ、肩甲上神経への鍼通電も行った。また最初の整形外科での診断が曖昧であったためセカンドオピニオンとして当院の信頼する整形外科を紹介し受診を勧めた。
5回目以降:セカンドオピニオンの整形で、上腕骨骨端線離開と診断を受け、整形外科でのリハビリを行うことになった。また4週経過したあたりから関節可動域も回復し、筋肉のタイトネスも改善されつつあるため当院での施術を並行して行っていくことにした。
経過
初回は、炎症もあり疼痛は強かったが可動域に関しては他動であれば少し改善した。
2回目以降も、痛みと可動域制限はありながらも筋肉のタイトネスの改善を図る施術を続けたことにより改善し、可動域も回復(おそらく水が吸収されたため)したが、筋力低下は確認されているためトレーニングも併用して行った。上腕骨の骨端線離開部はノースローによる対応を取り鎮静を狙った。その間心肺持久力の低下や筋力低下はスポーツ復帰後に再発のリスクが上がる可能性を懸念し基礎的なトレーニングや野球の動作トレーニング、有酸素運動などの指導をした。
考察
肩関節に水が溜まった原因として肩峰下インピンジメント症候群を起こしていたのではないかと考察する。要因として投球過多によるものや姿勢不良、筋力の低さ、柔軟性の低下などがあげられる。小中学生年代で怪我をした際は無理をさせず時間をかけてでも完治させていくことが重要と考える。